阿蘇山 西巌殿寺
古くから阿蘇山修験道の拠点として、また九州天台宗の中で最高位の寺格を持つ1300年の歴史ある寺院です。
所在地:熊本県阿蘇市黒川1114
JR阿蘇駅から徒歩約5分
創建:神亀3年(726年)
開基:最栄読師
正面の石段を上ると本堂があったのですが、平成13年(2001年9月22日)の火災により焼失してしまいました。
西巌殿寺は奈良時代の神亀3年(726年)、聖武天皇の願いにより渡来した高僧、最栄読師によって開かれました。西巌殿寺の名前は、阿蘇の火口の西の巌殿(洞窟)に仏様を安置して寺を開いたことに由来します。それより修行僧が集い、36の寺院、52の庵室が創建されました。その名声は遠く中国の歴史書に「鎮国山寿安殿」として記述があるほどです。歴代の皇室、武家の崇敬を集め、鎮護国家の祈祷道場として栄え、平穏な時代が続きましたが、安土桃山の戦国の世に至り、天正年間(1580年代)薩摩島津勢の兵火にかかり、各坊ことごとく焼失しました。慶長5年(1601年)肥後の統治を託された加藤清正公は本堂を修復し、36坊を麓の黒川村に移築し、再興をなされました。
中小路門
元来西巌殿寺へは行者通りから仲小路通りに入り、仲小路門から参詣していた。阿蘇山へ登る道も仲小路通りから西巌殿寺の下の横道を通り登っていた。
夏目漱石の二百十日にも「何でも突き当たりに寺の石段が見えるから、門を這入らずに左に廻れと教えたぜ」「饂飩屋の爺さんがか」と碌さんはしきりに胸を撫で廻す。「石段は見えるが、あれが寺かなあ、本堂も何もないぜ」と描写がされている。(現地案内板より)
西巌殿寺の石段
長石段に圧倒されます。
阿蘇山上はかつて山岳仏教の聖地として、三十七坊五十一庵が建ち並ぶ山岳仏教の一大霊場でした。西巌殿寺を本堂として、宗徒および行者と呼ばれる僧侶の坊舎が三十七、それに付属する山伏の庵が五十一。阿蘇坊中の隆盛を指して三十六坊と呼ばれていました。当時は約400人の僧侶が修行を積まれていたそうです。
「坊」とは僧侶や彼らの居住する坊舎、参詣者の宿坊などを含む全体の呼び方で、これらの集まりが「坊中」のことです。
本坊
本坊は本来僧侶の住居として作られたものである。現在は明治時代に建てられた内仏殿に建物を建て増し、檀信徒の回向などに使われている。本尊は阿弥陀如来(県指定重要文化財)他に釈迦誕生仏(同)大黒天坐像(同)などが安置され、他には三十六坊時代の古い仏様が安置されている。(現地案内板より)
西巌殿寺は阿蘇地域に33ヶ所の観音様が祀ってあります。(西国阿蘇33ヶ所観音霊場)の一番札所になっています。
明治23年には夏目漱石も訪れ、その様子は創設「二百十日」に描写されています。
広大な寺社内には天神様や足手荒神様なども安置されており、一般の方も自由に見学できます。特に階段奥には阿蘇に点在する西国阿蘇三十三ヶ所観音霊場の分祀が祀って蟻、境内で西国阿蘇三十三ヶ所観音のお参りができるようになっています。
この由緒ある西巌殿寺では毎年亮俊僧正の命日である4月13日に荒行である「火渡り」や「湯立て」が行われており誰でも見学できます。(現地案内板より)
毎年4/13に「阿蘇山観音まつり」という、山伏の姿をした行者たちが、「火渡り」や「湯立て」などの荒行で一年間の無病息災を願う行事があります。僧侶の読経の声が響き渡り、山伏達のほら貝の音が響き、護摩壇の燃える香りがします。その光景は神秘的であり、またエネルギッシュでもあります。湯立ては、大きな釜にぐらぐらと湯を煮立て、その中にササをつけて取り出し、勢いよくまきちらす荒行です。この湯を浴びた人は一年間無病息災と言われています。この湯を煮立てる間には、一人の行者がその釜の中に座禅を組みお経を唱えます。
足手荒神堂
足手荒神とは四百年前、佐々成政との合戦に敗れた御船城主の甲斐宗立が、落ち延びて、村人にかくまわれ、「我が死後はこの地にとどまり、手足の病苦の守り神とならん」と言い残して死んだという伝説に由来する。
西巌殿寺の足手荒神も御船より勧請されたといわれている。足手荒神には絵馬の代りに手形や足形に名前を書いて奉納する。
また、このお堂には修験道の開祖役小角や庚申が祀られている。(現地案内板より)
西巌殿寺の公孫樹
阿蘇町指定 天年記念物
西巌殿寺のイチョウ
紫陽花
現在の西巌殿寺は、元々阿蘇山頂にあった本堂などを、明治4年に移築したものだそうです。境内には、あじさい、もみじ、杉、様々な草木が繁り、野の花が咲く自然に囲まれた場所でもあります。普段はあまり参拝者もいなくて、静かな場所です。
雪の下
この花は、石段の脇にたくさん咲いていたユキノシタです。ユキノシタは、あまり日当たりのよくない場所や湿地、岩場などに咲きます。白く大きい2枚の花弁と上の方に 薄紅色で濃い赤紫の斑点がある3枚の花弁がついています。子供の頃、外で遊んでいてちょっとした怪我をした時は、このユキノシタの葉っぱの汁を塗ったりしていました。
池
お堂の周りには木がたくさん植えられていて、花も咲いていました。お堂の手前には池があり、鯉が泳いでいました。
西巌殿寺の阿蘇桧
阿蘇町指定天然記念物
樹齢:約200年
幹周囲:2.2m 樹高:18.5m
松尾芭蕉の歌碑
酒のめば いとど寝られぬ 夜の雪 はせを(ばしょう)
この句は貞享3年深川の芭蕉庵で詠まれた句。建立年代は不詳だが周囲の祠に天保15年の刻年があり同じ年代に建立されたと推定される。(現地案内板より)
境内には干支が彫られている灯籠がありました。