夏目漱石第三の家
夏目漱石の熊本での3番目の住まいで約半年間居住しました。この家から小説「草枕」の題材となった玉名・小天温泉旅行に出掛けました。
所在地:熊本県熊本市水前寺公園22-16
開館時間:9:30~16:30
休館日:月曜日・12/29~1/3
明治29年の大晦日に夏目漱石と同僚の山川信次郎は、この家から草枕の旅へ出発しました。明治の文豪夏目漱石が、熊本の第五高等学校(現在の熊本大学)の英語教師として赴任してきた熊本での3番目の家が「大江の家」です。
水前寺公園のジェーンズ洋学校教師館の敷地内に移築されています。この大江の家は漢詩人・落合為誠(いせい)の留守宅で、以前は現在の中央病院内にあったそうです。
夏目漱石旧居(第3の家)
もともとは、現在の新屋敷1丁目(旧大江村)にあったものを昭和47年この地に移築保存されました。漱石が第五高等学校教授として熊本に住んでいたのは、明治29年4月~33年7月までの4年3ヵ月で、この第3の旧居には明治30年9月~31年3月までの7ヵ月を過ごしていました。しかし、家主の落合氏が帰熊したため、やむなく井川淵に転居しました。
漱石はこの第3の家から「草枕」の素材となった小天旅行に出かけています。現在、熊本で漱石が住んだ5番目の家「内坪井の家」は夏目漱石記念館として保存、公開されています。
「草枕」
明治39年9月に「新小説」に発表された中編小説。「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ」の書き出しで有名な漱石39歳の時の作品 [熊本市](現地案内板より)
菜花黄
夏目漱石の漢詩
菜花黄 明治31年3月
菜花黄朝暾(菜花 朝暾に黄に)
菜花黄夕陽(菜花 夕陽に黄なり)
菜花黄裏人(菜花 黄裏の人)
晨昏喜欲狂(晨昏 喜びて狂わんと欲す)
曠懐随雲雀(曠懐 雲雀に随い)
沖融入彼蒼(沖融 彼の蒼に入る)
縹緲近天都(縹渺として 天都に近く)
迢逓凌塵郷(迢逓として 塵郷を凌ぐ)
斯心不可道(斯の心 道う可からず)
厥楽自シ黄洋(厥の楽しみ 自らシ黄洋たり)
恨来化為鳥(恨むらくは 未だ化して鳥と為り)
啼尽菜花黄(菜花の黄を啼き尽くさざるを)
「菜花黄」(さいかこう)は、漱石在熊の明治31年の作で、五言古詩の漢詩である。この作品には、朝日や夕日を浴びて黄金色に輝く菜の花の美しさと、その上空で激しく鳴き尽くす雲雀のさえずりに心奪われる詩情が詠まれている。
明治39年に発表された「草枕」でも、雲雀と菜の花は、第一章の重要な景物として描かれている。
春は眠くなる。猫は鼠を捕ることを忘れ、人間は借金のある事を忘れる。時には自分の魂の居所さえ忘れて正体なくなる。ただ菜の花を遠く望んだ時に眼がさめる。雲雀の声を聞いたときに魂のありかが判然する。雲雀の鳴くのは口で鳴くのではない、魂全体が鳴くのだ。魂の活動が声にあらわれたもののうちで、あれほど元気のあるものはない。ああ愉快だ。こう思って、こう愉快になるのが詩である。
夏目漱石来熊100年記念事業 '96くまもと漱石博推進100人委員会設置 1996年12月(現地碑文より)