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前田家別邸

夏目漱石の小説「草枕」の舞台となった、熊本の名士前田案山子の別邸です。

前田家別邸4

所在地:熊本県玉名郡天水町小天湯ノ浦
公開時間:9:00~17:00
入館料:無料
駐車場:2台分
明治30年の大晦日、当時熊本第五高教授だった夏目漱石がこの別邸を訪れ、逗留した数日間の出来事を元に小説「草枕」を書きました。

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本館跡

建設当時はここには木造3階建ての建物がありました。温泉客用の和室と奥に台所があり、湯殿とつながって旅館として運用されていました。
離れとは、廊下の端から屋外の階段でつながり、母屋とは中庭をかこむように渡廊下でつながれていました。(現地案内板より)

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CGで復元した前田家別邸の全容

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別邸と当主・前田案山子

 旧小天(おあま)村湯ノ浦には古くから温泉が湧き、小天温泉として数軒の宿があり、前田家別邸もその一つでした。
 前田家の当主案山子(1828年~1904年)は、幼名一角、元服後覚之助と名乗り、槍の達人で、細川藩に指南として仕えていましたが、明治維新に際し「農民とともに生きる」決意で案山子と改名。自由民権運動の闘士となり、干拓農地の免訴運動などに奔走しました。
 明治11年(1878年)、彼はここに別邸を建て、中江兆民や岸田俊子(中島湘烟)、中国革命の志士黄興など多くの同志が全国から来訪。時には大演説会も開かれるなど、さながら政治クラブの観を呈する中、請われるままに一部を温泉宿として開放しました。
当時、小天温泉は熊本市街から最も近い温泉地であり、旧制五高等学校教授であった夏目金之助(漱石)は、熊本での2度目の正月に同僚と二人でこの別邸を訪れ、離れに宿泊。「温泉や 水滑らかに 去年の垢」と数日間ゆっくり過ごしました。
 明治39年(1906年)、漱石はこの旅をモデルに「草枕」を発表しました。作中、前田家別邸は「那古井の宿」、前田家は「志保田家」、案山子が「老隠居」、次女卓(つな)が「那美さん」として登場。そばの第2別邸の庭池も「鏡が池」、八久保地区にある本邸は「白壁の家」と書かれています。
当時の別邸は、敷地全体に配置され、段差を生かした複雑な様相の屋敷で、中庭を囲むように旅館棟の本館(木造3階建)、浴場、離れと母屋(住居棟)が回廊、渡り廊下で結ばれていました。
本館と離れの一部はなくなり、母屋は立て替えられていますが、漱石が宿泊した離れの6畳間と浴場が現存しています。離れの6畳間は、昭和61年に修復。浴場は、平成16年に半地下の洗い場、湯槽を当時のままに保存、上屋が復元されました。
この建物から生まれた小説の名場面(現地案内板より)

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浴場

湯壺は半地下に掘り込んで造られ、手前が男湯、奥が女湯となっていますが、湯口は男湯側のみにあります。このために、湯温が高い男湯へ入ろうとした卓と漱石の接近遭遇があの名場面を生んだもので、当時の世相の一端も窺えます。
 半地下部分は、当時としては大変珍しく、貴重な人造石仕上げとなっていて、漱石をして「石に不自由せぬ国と見えて、下は御影で敷き詰め…やはり石で畳んである。」と見間違わせたほどのものです。消雪では4弾と書かれた階段も実際は7段あります(現地案内板より)。

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湯壺はセメント造りで、ほぼ全体が完全な姿で残されています。

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「草枕」で、「画工」が入浴しているとき、湯煙の中に「那美さん」が手拭を下げて湯壺へ下りて来る情景が描かれています。この真相は、後片付けを終えた卓が「女湯がぬるかったので、もう遅いから誰も居ないと思って男湯にはいって入ったら、夏目さんと山川さんがいたので慌てて飛び出した」のだそうです。

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浴槽内の七段の石段

浴場の半地下構造は、当時ポンプなどがなく、泉源より湯漕を低くして流下させるためにとられたものです。

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階段を上ると離れがあります。「草枕」で、主人公が回廊を引廻され階段を上がり下りしたりする「那古井の宿」の描写はこの別邸の地勢を生かした建物配置から生まれたものです。離れは正面から見ると2階のように見えますが、実際は平屋で、縁側から直接庭に出ることができます。

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前田家別邸離れ

夏目漱石が泊まった部屋
現在残っている6畳の間に続いて4畳半の2部屋がありました。漱石らは4畳半の部屋と6畳の部屋を両方使っていたと思われます。
「徘徊する振袖の女」は6畳の部屋からは壁に阻まれて見えないのですが、4畳半の部屋からは中庭を隔てて母屋の廊下を見ることができます。
夏目漱石の小説 草枕の舞台「那古井の宿」第一回衆議院議員 前田案山子別邸跡(現地案内板より)

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夏目漱石の人形

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回廊・渡り廊下:「草枕」で、女が振袖を着て行き来する場面があります。これは回廊仕立ての構造により成り立っている場面で、漱石は離れの中央または南側の間に居て母屋の廊下を通る卓を見たものと推測されます

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